未完・零度拒否サイクル(S17)

S17お疲れ様でした。

今期は結果としては奮わなかったものの、シーズン中盤に使用していた構築が今後の指針たり得るものだったため記事を作成します。めろ(@Claris_bradbury)さんとこのベースを叩き台に毎日議論させてもらえたため、個人としても非常に有意義な時間になりました。参考にした構築原案はりと。さん(https://arisayapoke0195.hatenablog.com/entry/2024/04/01/184346)のものになります。

 

○使用構築

 

○構築コンセプト

・零度パオジアンへの回答を持つママン構築

・被選出パターンを固定化して再現性を高める

 

○構築経緯(一部採用順が異なりますが割愛)

 既存のメタを乗り越えるママン構築ベースを探していたところ、ホムラを受け+エースとして用いる原案の発想に非常に感銘を受けたため、軸となるママンエルフホムラからスタートしました。この3枚では相手のガチグマが型不問で重いことに加え、先に剣舞した水ラオスに対してエルフを合わせる必要がある点で選出幅が狭まるため、後述のブリを採用。ブリと合わせてクマ入りスタンに強く出るためのパーツとしてオオニューラを採用。そして最後にここまでで地面の一環が切れないことと崩し要素を求めて霊獣ランドを採用しました。

 

○単体紹介

ママンボウ@とつげきチョッキ 毒 呑気 再生力

 243(20)-95-144(244+)-60-96(244)-63(個体値0)

 HB-パオジアンのA189珠抜群テラバを最高乱数切って耐える

 クイックターン/アクアジェット/アクアブレイク/ミラーコート

  

 構築の核。相手の直線的な動きに対してこのポケモンを絡めることで明確に優位が取れるため、多くの構築にかなり信頼して投げていました。アクブレを採用することによって瞑想カミに水テラスを"強要"できるという大きな強み(受け寄りの構築がキツくなりがちな有効テラスの温存を阻害)を持ちつつ、自身の毒テラスと合わせてドレキ型にも回復の起点にされにくいため、単体として求めたい役割をしっかりこなせる構成になったと感じます。実際にS17で結果を出されている方にも毒テラスアクブレ採用が数名見受けられましたが同様の理由かなと思います。

 少し話が逸れますが、僕自身はこのポケモンの真価が"型判別機能"にあると考えています。従来の選出誘導・選出抑制の議論(キョジが隠密サーフを誘う等)が活発だった時期と比較して、レギュFではスタン側の対応幅が基本広すぎるが故に「単体を単体で解決する」という手段に頼る必要性もなくなっていること、所謂見せキョジのような選出誘導力を活用した偽装構築が結果を出したこと、そもそもテラスタルの仕様上単体のメタは越えやすいことを踏まえると、単体での「選出誘導力・抑制力」という議論はもはや殆ど効力を失っていると感じています。

 その点、ママンボウというポケモンは「このポケモンが絡んだサイクルを崩せる型のみを誘導する」ことによって、パターンが多様化したBIG7系構築に対してもサイクル側が対応しなければいけない動きを大幅に減らすことが可能となり、反対にサイクル使用者側から再現性の高い回答を用意できるという点が非常に強力であると感じました。加えてS17ではスタン側のママン構築処理ルートとして"ママン抜かれ調整のガチグマ"が急増したため、後述のブリと合わせて上手く機能していた点も高評価でした。

 

エルフーン@残飯 鋼 臆病 悪戯心

 167(252)-64(個体値0)-105-97-127(252)-150(4+)

 HD-特化 ライコ/ガチグマ/アシレ意識でD振り S-準速ラオス抜き

 やどりぎのタネ/身代わり/守る/アンコール

 

 一番扱いが難しかった枠。

 構築単位で非常に重いスケショアンコ系のカイリューへの強烈な抑制となっていたものの、ママンエルフ@1と投げていけるだけのパワーを感じられなかったためほぼ顔採用となってしまいました。そのため後述のオオニューラの毒菱と合わせることを前提としたみがまも型とすることに変更したが、これ自体は天候系や展開ギミック系などの明確に直線的な構築のストッパーとしては非常に優秀でした。悪タイプのポケモンの選出に左右されないという点でも一定以上の使いやすさはありました。

 ただエルフーンというポケモンが重すぎて割り切られているのか、はたまた舐められているのかは定かではないものの、"エルフーンを連れてきていれば即勝ち"という展開がそれなりにあったため、このポケモンの選出誘導力・選出抑制力については最後までわからずじまい。持ち合わせている要素が唯一無二であるが故の問題点を痛感させられた気がします。

 

・ウガツホムラ@厚底ブーツ 水 腕白 古代活性

 207(212)-135-167(84+)-×-113-138(212)

 H-16n-1 B-余り S-1加速でツツミ抜き  調整原案ママ。

 フレアドライブ/ワイドブレイカー/竜の舞/朝の日差し

 

 革命的なポケモン。クマだけ処理すれば通る構築/炎ポンがいる構築にほぼ選出しました。

 原案は残飯でしたが、構築単位でステロ撒菱毒菱をかなり撒かれるのでブーツで良かったと思う場面が圧倒的に多く変更は正解でした。原案通り炎オーガポンを受ける役割を担いつつ抜きエースとなれるのはもちろん、ランドやブリで数的優位を取ってからはワイブレを絡めながらママンとのサイクルで詰ませも行うことができるため物凄いポケモンでした。炎+ドラゴンの範囲でカイリューサーフやラティハッサムといったサイクルを面で対応しながら崩せるのはかなり独特で、実際この2系統への勝率は非常に安定していました。またオオニューラの毒菱とのシナジーもあるため、ママンを選出せずに展開構築のように振る舞うことができるのも1つ強みだったかなと思います。

 また、対スタンで考えた場合には環境に多かった欠伸型を筆頭としたガチグマ・持久力ブリには不利を取りますが、①後述のブリジュラスで先に処理できている場合が殆どであること②エルフ手動晴れ→鉢巻ホムラの可能性があるため相手視点では明確に有利かわからないという2点を活かして積極的に選出していました。レギュGではコライドンが登場することでホムラの採用理由はかなり失われると予想していますが、それでもこのポケモンにしかできない役割は確かにあるはずなので引き続き考察を深めていければと思います。

 

・ブリジュラス@こだわりメガネ ステラ 臆病 頑丈

 165-99(個体値0)-151(4)-177(252)-85-150(252+)

 S-ラオス意識で最速

 流星群/ラスターカノン/10万ボルト/ステルスロック 

 最強ポケモン。ブリクマがいるならほぼ初手投げ、ラオスがいる構築にも優先的に選出。

 火力・耐久・行動補償・型の匿名性どれをとっても一級品のポケモンでした。構築単位で重いガチグマや持久力ブリをワンパンできる火力を有しながら、HPを少し残すだけで水ラオスストッパーにもなるという点で選出率は非常に高かったです。そのため初手対面で数的優位を取る→ママンボウをクッションにして再利用といった形で対戦中に2匹倒すことが多かった印象です。

 このポケモンのママンとの相性の良さは特に対ラオス性能にあります。ママンが誘導するラオスの型が圧倒的に剣舞が多いこと+止まりやすい襷・スカーフ・チョッキをほぼ呼ばないことから、ラオスのSを実質的に149までに抑えることができる(陽気剣舞型は殆どいない)ため、剣舞水テラアクアジェットを耐えるHPさえ確保していればメガネ10万ボルトで安定して対応できます。また相手視点からは持久力の可能性があるおかげで、安易な先制技を貰わないことも含めて処理が非常に安定しました。またラオス以外に対しても流星群で隙を見せた際のカミやサーフゴーには一度ママンバックからの展開の取り直しができるためリカバリーが効きやすく、このブリジュラスが苦手とする動きへの回答を持てていた点は強かったかなと思います。 

 

・オオニューラ@気合いの襷 ゴースト 陽気 毒種

 155-182(252)-81(4)-×-100-189(252+)

 フェイタルクロー/インファイト/猫騙し/毒菱

 

 構築の鍵。高い再現性をもたらすパーツ。展開系として振る舞いたい時に選出。

 型としては既存のよくある襷オオニューラなので説明は割愛しますが、このポケモンが構築上必要になる点は大きく分けて以下の2点です。

 1点目は対パオジアンにあります。サイクル構築を組む以上避けて通れない「絶対零度の拒否」を目指す段階でまず“パオジアンを選出させにくい”ことは一つの回答です。絶対零度採用個体は基本的に相手パオ+受け駒をまとめて見る必要があるため構成上[氷柱/零度/聖剣/先制技]になりますが、テラスなしではオオニューラの猫インファで対面に負けてしまう一方(インファのタイミングでの氷柱怯みは一旦考慮外)で、霊テラスを切るとオオニューラには勝てるものの零度が2割に下がることに加え後続のポケモンにテラス権が残らないという苦しい2択を押し付けられてしまうため、他にオオニューラの処理ルートがある場合(特に毒ガチグマ)は優先的に出てきません。次にサイコファング採用の4W個体ですが、こちらはそもそもママンに打点がないことに加え、襷水ラオス意識のファング+不意のリーチの関係で意地っ張りが多く、陽気オオニューラ自体にかなり隙を見せるため選出率が低いです。そして電気テラバ型についてはそもそも意地っ張り型が多く、オオニューラの猫+インファが上から通ることを考えるとテラスを強要されてしまうため、初手から選出するのはリスキーだと判断される傾向が強いです。以上のメジャーな3タイプのパオジアンに対してかなり対面有利と言えるかつパオジアン使用者側からも不利という認識があるポケモンであるため、構築単位で避けたい"ノーリスクで絶対零度をぶっ放される展開"はほぼ起きないという点において対パオジアン性能が高いと言えます。

 そして2点目は"毒ガチグマ/持久ブリの初手投げを強烈に誘導する"かつ、"チョッキガチグマと頑丈ブリの選出を抑制できる"点にあります。ここまでこの記事を読んでくださった方ならお気づきかとは思いますが、こちらのメガネブリジュラスが倒したいポケモンの"倒せる型を誘導"しながら、"倒せない型の選出を抑制"するという理想的な誘導・抑制機能を果たしてくれます。頑丈ブリは猫+インファで縛られていると考えれば選出されにくいのは明白なので割愛しますが、ガチグマについてはもう少し言及したいと思います。メガネブリジュラスが相手にするうえで障害となるのが襷とチョッキのガチグマとですが、まずノマテラはオオニューラ自体の猫インファで縛られてしまうことで選出を抑制できているとして、毒チョッキ型も①チョッキを持っていることでママンボウに欠伸→上からクイタンを打たせて裏にブラムを当てるといった立ち回りが出来ないことでミラーコートを拒否できない②不一致ブラムではママンを崩せないため投げるメリットが薄い上に個体数が少ないため殆ど考慮する必要がありません。そもそもママン抜かれにするだけで対策ができる(という認識)かつ、スタンへの汎用性を落とさないことを考えるとほぼ残飯(たまにオボンorシルク)になるため、メガネブリジュラスが流星群を撃つと倒れる耐久ラインのガチグマしか初手置きされないといえます。少し環境的に向かい風だったのはHDベースが非常に増えたため、初手のステラが強要されるようになってしまいましたが、構築単位で初手テラスを切ったとしても一番重い相手を処理しているので殆ど問題になりませんでした。

 さらに細かい点で言えばエルフとホムラが毒菱と相性が良い個体であること、相手の初手ランドロスを誘導するためこちらのランドロスを合わせていけることがメリットになっていました。言語化していけばいくほどこのポケモンである理由がはっきりとしてきたポケモンでしたが、ここまで詰めるずっと前段階で「ここオオニューラで良いんじゃないですか」と提案してくださっためろさんのセンスに改めて惚れました。

 

・霊獣ランドロス@こだわり鉢巻 氷 意地っ張り 威嚇

 185(164)-198(116+)-111(4)-×-101(4)-139(220)

 S16-1位のはっしーさん調整を微修正。

 地震/ストーンエッジ/ テラバースト/蜻蛉返り

 

 零度試行回数0の回答。

 “いかに51%を捻出して零度を打つか”を突き詰めてきた側として、認知のズレをついて零度パオを試行回数0で瞬殺するかを考えて見つけたポケモン

 零度パオジアンを使い続けてきた人間として、パオランド対面は零度受け(氷タイプ/頑丈)がいなければパオより速かろうと遅かろうと零度がド安定(スカーフランドなら裏から来るポケモンはパオより遅いから2回目を打てる)ということはよくわかっているので、一番カウンターとして機能する受けの氷テラス(万が一氷柱でも半減だから合理的に居座れる)を採用しました。大前提として僕は初手ランドロスをパオジアンに向かって投げる構築はその対面の引き先を構築設計上用意してある(アシレカイナサフゴガエンドヒドなど)ので、氷柱を押す行為が"こちらが希望する丁寧なサイクルに付き合ってくれる弱い選択肢"でしかなく、パオ側がどんな行動を取ろうが一ミリも非難する立場にないと考えています。その上で零度(剣舞)の1ターンで致命的なダメージを入れる→ノーマル・格闘以外の先制技圏内に入れる立ち回りを考えた結果、氷テラス鉢巻蜻蛉返り→ママンバックからアクジェで零度も剣舞電テラも乗り越えながらパオを処理できる立ち回りだと気づきました。この構築単位で考えても相手のランドやカイリューを飛ばしてTODという展開も非常に多く鉢巻氷テラランド自体の強さは十二分にあるため汎用性が著しく落ちたということもなく、テラスを切った後のオーガポンやウーラオスについてはホムラ・ブリがいることでケアもできていたことから初手テラスが弱くなることもありませんでした。また構築単位でディンルー絡みが非常に重たいのですが、ディンカイサーフのディンルーはランドを削る+ステロを撒きたいという要請から鉢巻地震を2回受けてくれることが多く、ドヒドディンルーについてはドヒドが鉢巻ランドの地震を切って動く+カイリューに引いてもやることがない構築設計なのでランド引き読みドヒドバックに合わせて地震(相手視点はカイリュー地震押すなよと思うかもしれないですが)がド安定で、カイリュー+ディンルーではママンホムラを倒せずTODで負けないという特殊な立ち回りで勝ちを荒稼ぎしていました。

 Sラインも非常に重要で、鉢巻氷テラスと同時期に襷氷テラバが結果を残していたことで、自分より速いランドロスには氷テラバケアでママン引きから展開をし直す形で良く、自分より遅いランドロスには積極的にテラスを切って倒しにいって良いという判断基準を早々に確立できたことで初手ランドミラーでも殆ど不利展開を取ることはありませんでした(ホムラがブーツを履いていることでステロも痛くない)。

 

○反省 

 ここまで書いてなぜこの構築を使ってないのか、なぜ勝てなかったのか。答えとしては「環境との相性が悪かった」これにつきます。

 具体的には毒クマ+持久ブリの増加によってそのメタ枠に巻き込まれた(チオンや宿木水ポン等)、ママン構築ミラーへの回答に乏しかったこと、ノマテラ竜舞神速カイリューが増えてしまったことで途中で手放してしまいました。

 1•2シーズンほど前であれば確実に結果を出せるだけの質があった構築だったと思うため、完成が遅かったことが敗因の全てだと思います。レギュFは終わってしまったため新たなプールで構築の質を高めていきたいと思います。

 

○あとがき 

 社会人になってからの取り組み方がずっとふわふわしていて、今期もあっという間に終わってしまった気がします。「量が足りないなら質で補わなければいけない」という強迫観念で机上論のポケモンだけをやり続けてしまったことで結果の伴わないシーズンになってしまったと言えるかもしれません。それでも今期この構築を考え続けたことでまたプレイヤーとして強くなれる気がしました。またがんばります。

 

 一緒にこの構築の可能性を模索してくれためろさんとお名前を出すことを快く了承してくださった原案者のりと。さん、ありがとうございました。